古生物・恐竜 妄想雑記

恐竜好きないち素人による妄想語り置き場

『恐竜博2023』をgdgd妄想②

 公式発表直後にこんな記事を書いたわけだが、当ブログの閲覧ランキングの栄えある1位がぶっちぎりでこれになってしまったわけである。ズールとかシレサウルス科とか、他に読んでいただきたい記事もあるにはあるがそれはそれであり、当ブログに来ていただいたことそのものに感謝である。

 さて、前回記事は妄想と銘打ったものの、「鎧竜を含む装盾類が主役になるかもしれない」と書いたのみであり、具体的にだれが出るとか、骨格総数がいくつになるとか、そういったことは予想していなかった。というわけで今回の記事からいよいよ本格的に予想をしていこうというわけである。そのためにはやはり前例がどういった内容だったのかというデータが必要になるわけで、ゲームをしながらこそこそまとめていたわけである。その過程で結構面白い傾向が見られたのでここで中間報告と行こうというわけだ。詳しい予想記事は次回に見送るとして、今回は過去4回の科博主催の恐竜博の傾向を探っていく回である。

 

 

1.解析手法

 過去4回に国立科学博物館で開催された恐竜博である『恐竜博2011』『大恐竜展〜ゴビ砂漠の脅威〜』『恐竜博2016』および『恐竜博2019』の公式図録より、展示された復元骨格、実物化石の展示総種数を求めた。種数に数えたのは展覧会時点で命名されていた恐竜類、恐竜形類、ワニ類、鳥類、哺乳類等である。このため植物や魚類、当時未命名で「〜類」名義であった恐竜は統計外としている。ただし、展覧会後に記載されたゴビヴェナトルとオクソコについては統計対象とした。また『恐竜博2019』にて展示された未命名のテリジノサウルス類についても、図録やキャプションで新属であることが予想されていたため、こちらも統計対象とした。

 各展覧会での総種数計算後に「時代」「分類」「サイズ」の3項目について検討を行った。「時代」の項目は各生物が生存していた時代について、三畳紀ジュラ紀前期・中期・後期、白亜紀前期・後期、新生代の7個に分割した。「分類」の項目は各生物の分類に従い項目分けを行った。このうち鳥類については獣脚類に含めず、ワニ類や哺乳類等と同じく「その他」枠に含めた。「サイズ」の項目は各展示標本の大きさによって、5m未満を「小型」、5m以上10m未満を「中型」、10m以上を「大型」と分類した。なお、頭骨やプレートなど一部分のみの展示となった場合は「部分化石」としている。

 

2.解析結果

 以下に各恐竜博の展示傾向を示した円グラフを掲載する。全体的な傾向として、時代内訳はジュラ紀白亜紀で8割以上の展示内容を占めている。分類内訳は獣脚類が最も多いが、恐竜以外の生物も1割以上は安定して展示されている。サイズ内訳は小型恐竜の展示が5割から7割と最も多く、骨格のない部分化石の展示も安定して存在している。

 『恐竜博2011』は展示種数27種のうち、時代内訳、分類内訳ともに全時代、全グループを網羅した展覧会となっている。サイズ内訳は小型種のみで7割を占めており、2割を中型、残りを大型種と部分化石で占めることになった。

 

 『大恐竜展〜ゴビ砂漠の脅威〜』は展示化石のすべてが白亜紀のもので、うち9割以上が白亜紀後期のものとなった。また、オルニトミムス類やオヴィラプトル類の展示が多かったため、分類内訳は獣脚類のみで5割近くの展示内容を占めている。サイズ内訳は『恐竜博2011』とほぼ変わらない円グラフではあるが、部分化石が占める割合が多い結果となった。

 

 『恐竜博2016』の傾向は、『恐竜博2011』と酷似する。時代、分類ともにまんべんなく展示されていた。

 

 『恐竜博2019』では、三畳紀の生物を取り扱った展示が一切存在しなかった。分類内訳も過去恐竜展ではもっとも偏っており、展示分類は獣脚類・鳥脚類・周飾頭類およびその他分類群となり、竜脚類と装盾類の展示はゼロとなった。また本展では、恐竜絶滅後の世界としてK-Pg境界前後の生物を展示していたほか、K-Pg後に進化した大型鳥類であるガストルニスが展示として登場していた。このため、展示内容には新生代の生物が14%含まれる結果となかった。

 

 

3.結果考察

 展示標本の時代はさすがに白亜紀ジュラ紀優勢ではあったが、三畳紀が忘れられているということはなく、恐竜初期進化の紹介という意味でしっかりと展示されている*1。『恐竜博2023』の展示コンセプトは「恐竜たちの「攻・防」についての研究の最前線」とのことであるため、恐竜博2023において三畳紀の恐竜が展示に含まれるかどうかは非常に微妙な線である。とはいえ、スピノサウルスがメイン展示となった『恐竜博2016』にせよ、ゴビ砂漠を扱ったために三畳紀はおろかジュラ紀すらもすっ飛ばされた『大恐竜展〜ゴビ砂漠の脅威〜』にせよ、その展示順はあくまでも三畳紀から始まっていた(これに関しては『恐竜博2019』が例外的と言えるだろう)。よって『恐竜博2023』についても、三畳紀から白亜紀後期まで網羅的に展示される可能性が高い。後述する小型標本枠としても、各恐竜群の基盤的な生物が展示会場冒頭に登場することになりそうだ。

 分類内訳だが、まあ竜脚類が展示されることは(多分)ないだろう。なにせ展示会場は地球館地下一階の特別展示室である。あの狭いスペースに20mだの30mだのといった超大型竜脚類を入れてしまっては、さすがのティラノサウルスだって肩身の狭い思いをするわけだ。加えて今回の展示コンセプト的に、「巨大化することで生き残った」竜脚類は極めて相性が悪い。出演機会は幕張メッセに譲っていただこう(とはいえ、可能性がゼロではない。それについては③にとっておこう)。竜脚類とほぼ同じような戦略をとった鳥脚類と厳しいといえようか。

 となると残るのは周飾頭類、そして装盾類である。公式サイトにのる「今度の主役はトゲトゲだ!」の言葉、手始めに発表されたズール、そして「恐竜たちの「攻・防」についての研究の最前線」という展示コンセプト。やはり今回の主役は、これまで脇役に徹していた(なんなら2019年には出演機会にも恵まれていなかった)装盾類達になりそうだ。またこのテーマなら、頭に備えた角や分厚い頭そのもので身を守った周飾頭類も出演する機会には与えられるだろう。

 総展示数は例年30種前後で推移しているため、『恐竜博2023』の展示総数も30種前後で収まることになりそうだ。うち中型・大型恐竜の全身復元骨格は10体分行くか行かないかといったところだろう。とはいえ例年の恐竜博では5m以下の小型恐竜も復元骨格が展示されることが多いため、実際の復元骨格展示数は10種以上となる可能性が高い。

 ただ残念ながら、毎回恒例となっている羽毛恐竜の展示枠については諦めたほうがよさそうだ。展示コンセプトの都合上、熱河層群義県層から産出するもろもろの化石たちは今回の展示会とは相性が悪そうだ。もっとも、そういった小型恐竜たちがことごとく展示機会がないかと言われればそんなことはないだろう。装盾類のうち鎧竜類、あるいは周飾頭類の本番は白亜紀に入ってからだが、その進化はジュラ紀の時点で始まっている。竜脚類という超大型恐竜の足元でどのような生存戦略が展開されていたのかは、まさに『恐竜博2023』のテーマと言える。小型恐竜枠にも、面白く、そして貴重な化石たちが目白押しになりそうだ。

 

4.まとめ(と言う名のナニカ)

 以上、過去4回の恐竜博の解析から見えてきた『恐竜博2023』の予想をグダグダと行ってきた。大まかに話を箇条書きにするならば

・展示内容は三畳紀から白亜紀までまんべんなく

・装盾類を中心に、獣脚類、周飾頭類の展示がメイン(竜脚類と鳥脚類は不明)

・展示種数は30種程度

の3点である。もちろん今回も、中生代を彩った植物化石の展示や、同時代に生きていた各種爬虫類や哺乳類の展示があるのは間違いない。もうすでに3000字を超えているため、詳しい予想――――すなわち、具体的な属名を挙げての詳細な予想―――は次回記事である「『恐竜博2023』をgdgd妄想③」に譲るとして、今回の記事はここまでだ。

 

参考文献

真鍋真,2011,恐竜博2011,朝日新聞社,p157

真鍋真,2013,大恐竜展 ゴビ砂漠の脅威,読売新聞社,p140

真鍋真,2016,恐竜博2016,朝日新聞社,p145

真鍋真,2019,恐竜博2019,NHK,p183

*1:例外は下部白亜系より上位の地層しかないゴビ砂漠を主題に扱った『大恐竜展〜ゴビ砂漠の脅威〜』と、恐竜ルネッサンス以降の恐竜研究を主題とした『恐竜博2019』くらいか