古生物・恐竜 妄想雑記

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『福井県立恐竜博物館』リニューアル後レポート

 特別展のレポートだけで当ブログが終わるはずがないのである。

 FPDMが2023年7月にリニューアルオープンを迎えたことは当ブログの読者様ならとっくにご存じのことだろう。リニューアルオープンに伴い、FPDM特別展常連だったいくつかの標本が常設展示に回っており、結果常設展示はリニューアル前よりも豪華なことになっている。また最新研究に伴っていくつかの標本は名義が変更されていたりもするため、リニューアル前から続投している標本についても油断することはできないわけである。そんなわけで今回はリニューアル後のFPDM常設展示についてレポートである。

 

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 常設展示に行くより前にこちらも紹介しておこう。特別展示室から常設展示室へ向かう通路の奥に、FPDMが所有する復元模型などが展示(?)されているのだが、その一角にディロサウルスが展示されていた。今後この展示が継続されるかどうかは不明であるが、実物化石の展示であるため見かけたら写真を撮るぐらいのことはしておきたい。

 

 獣脚類コーナーはいろいろと目立つ変更点が多い。タルボサウルスが鎮座していた場所には、スコミムスが展示されていた。体骨格の大部分が産出した大型スピノサウルス科ということで、スピノサウルス科の形態についてよくわかる標本である。近くには変わらずティラノサウルスがいるので、魚食に特化した獣脚類と典型的な獣脚類*1とを見比べるというのもいいだろう。

 

 「ステノニコサウルスの一種」として紹介されているこちらの標本も、かつての特別展で展示されていた標本である。近縁種を参考に復元されたものというそうだが、産地を見る限りツー・メディソン層であるような気がする。隣には同じくデイノニコサウルス類であるデイノニクスが展示されているため、立体視可能な頭骨や、比較的小さなシックルクロー、アークトメタターサル構造となる中足骨など、トロオドン科の特徴をデイノニクスと対比して観察してみたい。

 

 ファルカリウスはスコミムスの足元に目立たぬように展示されている。テリジノサウルス類の中では最も古い時代に生息していたということだが、長い首や頭骨の雰囲気などは明らかにフクイヴェナトルよりも進化的である。フクイヴェナトルの展示コーナーからは少し距離があるため、容赦ない写真撮影をオススメしたい。このほか獣脚類には新しくヘユアンニアが展示されているため、よく観察しておこう。

 

 竜脚類の新規はブラキオサウルス幼体とプラテオサウルスである(なおプラテオサウルスの写真を思いっきり取り忘れていた)。ブラキオサウルスの生態はすでに展示されているが、いかんせん巨大であるためじっくり観察するということが難しい。その点こちらの標本は幼体ながらもブラキオサウルスの特徴は持ち合わせているため、成体の観察が難しいという難点を補える標本である。また竜脚類の幼体というものについてもよく示してくれている標本であるため、忘れずに観察したい。プラテオサウルスについても知名度の高い原竜脚類でありながら意外と出会える機会は少ないため、忘れずに見ておこう。筆者は完全に忘れてしまったが。

 

 

 リニューアル前にはエドモントニア名義だったのだが、リニューアルに伴いデンヴァーサウルスに名義が変更されている。隣にいたエウオプロケファルスもスコロサウルスと名義が変更されている。白亜紀後期の装盾類がそろって展示されているというありがたい展示内容であるため、これを機に白亜紀後期のノドサウルス科とアンキロサウルス科の比較観察に励もう。このほか名義が変更された恐竜としてはメデゥーサケラトプス(リニューアル前はアルバータケラトプス名義)などもいた。

 

 グレートプレーン恐竜博物館より2033年まで借りて展示しているブラキロフォサウルス「レオナルド」はやはり注目ポイントであろう。ほぼ全身が保存されているのみならず、骨化腱や皮膚痕、筋肉跡やケラチン室の爪なども保存されるというとんでもない保存状態である。床置き展示という関係上観察が難しい場所もあるのだが、頭骨などは間近で見放題である。またエドモントサウルスのミイラ化石も相変わらず続投しているため、そちらも併せてみても面白いかもしれない。

 

 続いて日本産恐竜のコーナーである。昨年記載されたティラノミムスは記載後ということで腸骨もしっかり展示されていた。観察ポイントは奥のキャプションで説明されているが、とりあえず中央にリッジのある腸骨は必見である。

 

 日本産恐竜と言えば、こちらもそうである。展示内容自体は変わっておらず名義が更新されたのみではあるが、それでも無名のマニラプトル形類だった時代を知っていると口角の上がる展示である。

 

 東南アジアの恐竜ということで、しれっと展示されていたシャムラプトルである。一応カルカロドントサウルス科として展示されているが、その系統が不安定であることは以前本ブログでグダグダ語った通りである。化石の部位について説明は特にされていないので、可能な方は記載論文を準備して挑んだ方がいいだろう。近くにはモザイケラトプスの産状レプリカが展示されていた。

 

 3階にも新規に展示された標本が多数登場している。こちらは2021年の特別展で展示されていたティロサウルスである。残念ながら展示位置がかなり高いこと、展示位置が最奥であること、そもそもデカいことの3点により、間近で観察するということはほぼ不可能である。とはいえ下から見上げれば衝角のように強化された吻部も観察可能である。モササウルス類の外形を理解するならば、遠くから見ても十分だ。相変わらず近くにはプラテカルプスもいるため、そちらも併せてみたほうがいいだろう。

 

 リニューアル前にいた記憶のない中生代哺乳類もいくつかいた。こちらのツァンヘオテリウム以外にもディディルフォドンやエオマイア、シノディルフィスなどの化石も展示されていたため、要チェックである。

 

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 以上、リニューアル後のFPDM常設展示のレポートであった。リニューアル前と比べて標本数は純粋に増加しており、以前にもまして見るべき場所は多い。良質な復元骨格や実物化石を多数展示しているのは相変わらずであり、休憩なしの強行軍をとろうものなら途中で力尽きるのは必然である。幸い座る場所はそこそこあるため、定期的な休憩をはさみながら見て回ることをオススメしたい。レストランや売店に長蛇の列が並ぶのを見越して早めにこれらを済ませたうえで常設展を見て回るというのも、手段のうちの一つだろう。各々の楽しみ方でリニューアル後のFPDMをぜひ攻略していただきたい。もちろ常設展図録も更新されているため、こちらの購入もお忘れなく。

*1:もっとも、ティラノサウルス自体は同上科内でも特異な進化をしているため、ティラノサウルスをもってして典型的な獣脚類とは言いづらい。アロサウルス当たりの方がより典型的な獣脚類と言っていいだろう。