古生物・恐竜 妄想雑記

恐竜好きないち素人による妄想語り置き場

『恐竜博2023』をgdgd妄想③

 『恐竜博2023』の妄想記事も3つ目である。初回は展示内容を軽く想像しただけで終了させた。第2回では過去4回の恐竜博でどのような展示が行われたが、それらの前例をもとにどのような展示が予想されるかという内容に終始させたが、いよいよ本番である。今回は具体的にだれが登場するのか、詳しく予想していこう。

 

 さて、前回のgdgd妄想②では以下のような予想を立てていた。

・展示内容は三畳紀から白亜紀までまんべんなく

・装盾類を中心に、獣脚類、周飾頭類の展示がメイン(竜脚類と鳥脚類は不明)

・展示種数は30種程度

ここからさらに詳細な予想をしてみよう。前回ブログでは「小型」「中型」「大型」「部分化石」というサイズに注目して、各恐竜展における展示比率も出していた。ざっくりと眺めれば5m未満の小型生物が展示における占める割合が5~7割といったところである。残りの3種類については各恐竜展で割合が大きく異なっているため明確にこれと定めることが難しい。とりあえず今回は展示種数を30種と仮定したうえで

・小型(5m未満):6割=18種

・中型(5m以上10m未満):1割=3種

・大型(10m以上):1割=3種

・部分化石:2割=6種

を目安として検討する。

 

 さて、まずは三畳紀からだ。恐竜出現から間もない黎明期であるため装盾類も何もないのだが、とりあえずここでは恐竜の初期進化について語られるはずだ。三畳紀の恐竜を語るうえでの常連メンバーであるエオラプトルエオドロマイオスはほぼ確定でいいとして、問題は鳥盤類だ。ヘテロドントサウルスでも問題はない気がするが、筆者はここでチレサウルスアシリサウルスと予想しよう。片や変わりダネ獣脚類から基盤的鳥盤目に籍を移したかつての問題児、片や「シレサウルス科」に所属する現在進行形の問題児だ。オルニトスケリダ仮説、あるいは「プリオノドンティア仮説」についてキャプションや図録で言及があるかもしれない。

 続いてジュラ紀と言ってみよう。ジュラ紀にまつわる最新研究と言えば(個人的には)ディロフォサウルスの再記載である*1。ちょうど『ジュラシックワールド ドミニオン』にてディロフォサウルスが割と活躍していたこともあり、ディロフォサウルスが推されるちょうどいい機会である気もする。ディロフォサウルスと同地域同時代にいたスクテロサウルスは基盤的装盾類ということで、『恐竜博2023』のテーマに沿う存在である。あるいは同じく基盤的装盾類のスケリドサウルスも可能性としてゼロではない気もする。

 ここまでジュラ紀前期だったため、(中期を飛ばして)ジュラ紀後期だ。地球館1階に鎮座するアロサウルスや『恐竜博2011』で共演したヘスペロサウルスは「装盾類VS獣脚類」の構図となるため、まあ確実に登場するだろう。ステゴサウルスにしても背中のプレートや尾の棘(サゴマイザー)が展示されるということはありえそうだ。3連続でモリソン層産出の恐竜が続いたが、モリソン層からは『恐竜博2023』にふさわしい恐竜がいる。ジュラ紀の鎧竜として報告されたガーゴイレオサウルスミモオラペルタの2種である。このうちガーゴイレオサウルスについては(英語版Wikipedia情報で)デンバー自然史科学博物館に復元骨格が、ミモオラペルタはワイオミング恐竜センターに復元骨格が、それぞれ存在するようだ。ただしより多くの部位が産出しているのはミモオラペルタの方であるため、展示されるとしたらミモオラペルタが全身復元骨格、ガーゴイレオサウルスが頭骨化石(実物)のみ展示といったところだろう。恒例となっている羽毛恐竜枠(正確には母岩ブロック展示枠)にはグアンロングインロングを推してみよう。いずれも白亜紀後期に繁栄するグループへとつながる始祖的な恐竜である。

 

 続いて白亜紀前期だ。白亜紀前期で名の知れた装盾類となると、パッと思い浮かぶのは肩棘が長大に発達し、ほぼ完全な化石も産出しているサウロペルタあたりだろうか。『恐竜博2019』にて新しく復元骨格が作られた同時代同地域の捕食者であるデイノニクスと向い合せ、あるいはデイノニクスの攻撃を受け止めるような展示がされていたら(個人的に)興奮モノである。

 白亜紀前期で鎧竜関係の最新研究と言えばステゴウロス記載時に提唱された「パラアンキロサウリア」の設立だろう。装盾類主役で、テーマがテーマである。パラアンキロサウリアの紹介をしないとは考えにくいが、何せステゴウロスの記載は2021年である。おそらくだがステゴウロスの代理で、パラアンキロサウリアで最も詳細が明らかになっている元ミンミことクンバラサウルスが展示されるのではないだろうか。クンバラサウルスと対になる捕食者&出場が確定しているマイプと同じくメガラプトラの枠としてアウストラロヴェナトルにも期待を寄せたいところである。

 

 最後に白亜紀後期である。白亜紀後期の小型恐竜枠としてヴェロキラプトルピナコサウルスを上げよう。鎧竜としては珍しく幼体化石が多く産出しているピナコサウルスは、鎧竜の成長過程について様々な情報を持っているが、それが紹介されたのは『大恐竜展~ゴビ砂漠の脅威~』である。もはや10年近く前の話にはなってしまうが、また改めて紹介することになるかもしれない。

 話はそれるが、装甲を持つのは何もこの時代、恐竜だけの特権ではない。カメ類は三畳紀に出現しているし、ワニ類にも装甲を持つ生物が多数登場していた。というわけで恐竜以外の生物枠として白亜紀後期に生きていたワニ類であるシモスクスアルマジロスクスをあげよう。その他にカメ類がいくつか展示されるかもしれないし、それらの生物と同地域にいた恐竜も部分化石として登場するかもしれない(シモスクスと同地域にいたマジュンガサウルスを個人的に挙げる)。このあたり、恐竜以外の古生物は例年何かしらの形で登場しており、『恐竜博2023』でも登場するのは確定だろう。ただし誰が登場するのかは全く予想がつかないが。

 そして主役たるズールのお出ましだ。過去の恐竜博ではメイン展示の恐竜と対になるような存在が必ずいたのだが、ズールが産出したジュディス・リバー層といえばまともな化石が産出しずらい(と言うか、ズールが例外的に完璧な産出状態とも)ため、ズールの対となるような恐竜は思い浮かばない。近縁種であり地球館地下1階に常設展示をしているスコロサウルスが出張してくる可能性もあるが、せいぜいアンキロサウルスの頭骨が展示されて完結にも思われる。後はまあ、いつものアイツ(後述)ぐらいか。

 鎧を持つのは何も鎧竜だけの特権ではない。白亜紀に全盛期を極めたティタノサウルス類のうちいくつかは、鎧竜のような皮骨を持っていた。この中で有名なのはサルタサウルスアンペロサウルスあたりだろう。さすがに復元骨格は登場しないとは思うが、鎧竜の皮骨と比較を行うといった目的で、彼らのような皮骨からなる鎧を持つ竜脚類の登場もありそうだ。

 そして話が南米大陸へ移ったところでもう一人の主役(?)であるマイプの出番である。南米大陸における白亜紀最末期の大型獣脚類として2022年4月に華々しく記載されたマイプだが、とはいえ残念ながら化石の産状はお寒いものである*2。上記にアウストラロヴェナトルを上げたのはそんな部分化石ばかりのマイプを補完する意味もあるのだが、やはり展示会の花形として復元骨格としてほしいところである。となれば復元骨格が存在するメガラプトラの模式属、メガラプトルの復元骨格の展示に期待したい。マイプの記載論文では、メガラプトラがティラノサウルス上科の姉妹群として系統を示されたため、マイプやメガラプトルの対になる存在としてティラノサウルスが出場することになるだろう。そしてティラノサウルスの後方にはK-Pg境界の露頭が展示されて、会場は終わりを迎えるはずだ。

(あとはこれに加えて、夕張町産ノドサウルス類が気になるところである。というか最新研究というならば、科博がかかわっている甑島での発掘調査に加えて、再検討が進んでいる北海道の恐竜化石たちもいくつか展示される気がするのだが、どうなるだろうか。とりあえず夕張町産ノドサウルス類やおまけで登場する可能性の高いパラリテリジノサウルスあたりに期待したい。)

『恐竜博2023』の筆者予想に基づく出演恐竜一覧表。赤太字は2022年11月時点で登場が確定している恐竜である。

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 以上が『恐竜博2023』の予想である。これには筆者個人の願望が8割以上含まれていることは言うまでもないし、公式から発表された情報はポスター1枚とTwitter1コメ分である。これ以上の情報が上がれば予想はどんどんと変化するし、何ならこの予想は一切当たらずに終わる可能性だってありうるのだ。実際のところどのような展覧会になるかは開催日当日までのお楽しみとなるだろう。それまでにできることと言えば、図鑑を見たり妄想したり、オープンアクセスの論文を前に悶絶したりと、取れる備えはいくらでもある。とりあえず今回のブログに最後までお付き合いいただいた読者の皆様も、今のうちに皆様なりの『恐竜博2023』を考えてみるというのは、いかがだろうか。

 

ひとまずこれで「『恐竜博2023』をgdgd妄想」シリーズは終了となりますが、追加情報次第で続報を書くと思います。さぁて、筆者の予想が当たるか否か…。大体の場合外れるけど

*1:将来的にブログのネタにしたいため詳細は省くが、要約すると①従来考えられていた以上に強力な捕食者であった②「元祖大型獣脚類」と呼べるレベルでメガロサウルス科などの大型獣脚類と近縁だった、の2つである。ついでにどさくさに紛れてハルティコサウルス科が解体された

*2:詳しくは記載論文を読んでいただきたいが、発見された部位は部分的な胴椎と肋骨、これまた部分的な尾椎、烏口骨と骨盤の一部のみである。メガラプトラ、中でもより派生的なメガラプトル科(メガラプトリダエ)の特徴がもっともよくあらわれる前肢の要素はほとんど産出していない