古生物・恐竜 妄想雑記

恐竜好きないち素人による妄想語り置き場

『福井市自然史博物館』レポート

 当ブログでやりたいこと、書きたいものはいろいろと企画しているのだが、諸事情に伴い没にした企画や記事は現時点ですでにいくつか存在する。今回のネタも本来であれば昨年の5月から6月には投稿するつもりだったのだが、連休前後にあんな奴こんな奴が記載されたことにより予定急変を迫られた結果、結局記事の下書きを作ることもなく、120枚の写真とともにお蔵入りになったわけである。

 しかしながら、そうもいっていられない事態になってしまった。国立科学博物館が危機的運営状況を理由にクラウドファンディングを開始したのである。日本屈指の科学博物館でさえこの状況であり、いわんや地方の中小博物館をや、というところである。常日頃より博物学からは山よりも高く海よりも深い恩を受け、ましてやこうして古生物系ブログを運営して1年半が経過した筆者がこの恩に報いる方法など一つしかないわけだ。そんなわけで今回は福井市が運営する自然史系の博物館である『福井市自然史博物館』のレポートである。なお写真のすべてが昨年(2022年)の5月に撮影したものであるため、展示の入れ替え等の可能性についてはご了承願いたい。

 

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 福井県の博物館と言えば基本的に福井県立恐竜角物館(以下、FPDM)一強なわけだが、FPDMの根底は福井県における自然史の総合博物館という立ち位置にある。それに対して福井市自然史博物館は徹底的に「福井市の自然環境」に特化した展示となっている。

 

 それをある意味象徴する展示がこちら、福井県の足羽山(同博物館が立地する山でもある)から採取される笏谷石の展示である。笏谷石は1800万年前に噴火した火山由来のデイサイト軽石火山礫凝灰岩である。本展示では笏谷石の由来や見た目ごとの呼び名、採掘場所や利用方法までもが紹介されている。またこれ以外にも、足羽山の地質や岩石の紹介コーナーがあったりと、足羽山の地質に関するコーナーはかなり力を入れて作られていた。かつて地質学をたしなんでいた筆者としてはこの時点で最高の展示であるが、まだまだ序の口である。

 

 福井市自然史博物館のテーマが「福井市の自然環境」であるということは上述したが、自然環境のジオラマおよび標本紹介も実に力が入っている。写真にあげているのは「川の自然」だが、これ以外にも海岸や森、さらには町の自然というジオラマもある。

 

 そんなジオラマと対応するように、昆虫や植物の展示が多数。特に昆虫の展示はどれも見やすい展示がされていた。解説もわかりやすく、まさに地元密着型の博物館といった感じである。

 

 打って変わって、今度は地学系の展示である。こちらでの主力は主に新生代の化石であり、ともすれば別世界の出来事に感じてしまいがちな中生代の化石とは異なり、より一層身近に感じることができるだろう。実際にハマグリやアサリ、サルボウガイなど現生でも見られる生物の化石が多く展示されている。

 新生代と言えばビカリアである(断言)。こちらも多くが福井県内で産出した化石である。状態もよく、細部までクリーニングされている美しい化石である。これ以外にも大野市に分布する手取層群から産出したアンモナイトや植物化石などの展示もあったが、なぜか上下逆で登録されてしまっていた(&はてなブログでの修正がよく分からない)ため、断腸の思いで割愛である。どれも非常に美しい標本であるため、必見である。

 

 そして福井市自然史博物館の目玉展示と言えばこれである。フロアど真ん中に配置されているこちらの棚、何やら引き出しごとにラベルが張られて整理されているようだが……。

 

 引き出しの中身がこちら(上下逆で申し訳ないが……)。植物標本がずらりと敷き詰められている。これ以外にもキノコや粘菌などの標本が引き出し一杯に敷き詰められていた。正直に言えばこれだけで満腹感を覚える展示であり、これこそまさに福井市自然史博物館の主力と言っていいだろう。ぶっちゃけた話、筆者もすべてを見た訳はないため、実際の展示についてはぜひ訪れていただきたい。おそらく写真以上に圧巻されるはずだ。

 

 筆者が行った時にはこんな展示もあった。福井県南越前町の夜叉ヶ池にのみ生息するヤシャゲンゴロウである。環境省レッドリストでⅠB類というとんでもない希少生物であり、他に見ることができる場所と言えば筆者が知っているのは越前松浜水族館ぐらいである。

 

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 以上、本当は昨年にやりたかった福井市自然史博物館のレポートであった。かなりこじんまりとした博物館ではあったが、その分密度はFPDMに負けず劣らずの濃厚っぷりである。生物が好きな方にも、筆者のように地質学をたしなむ方にもお勧めできる博物館であり、来訪して損は全くないと言っていいだろう。福井県と言えばついついFPDMが筆頭に上がりがち(個人の感想)だが、福井市に宿をとった場合はこちらの来訪もご検討いただきたい。繰り返すが充実した展示内容であり、損は全くない。

 アクセスは福井駅から足羽山のふもとまでバスが出ているが、基本的には車で来訪したほうがいいだろう。とはいえ時期になればアジサイや新緑が賛同を彩っており、徒歩で向かってもそれはそれで楽しいはずだ(かなりの雨天でビニル傘を差しながら一人徒歩で向かったアホは筆者ぐらいだと願いたい)。中腹には食堂があったり、ふもとには神社が充実していたりと、足羽山周辺でも楽しむことができる。福井県のおすすめスポットであった。